公益財団法人航空科学博物館(千葉県山武郡芝山町スカイパークしばやま内、理事長:椎名明彦)は、一般社団法人日本航空宇宙学会がYS 11型旅客機を航空宇宙技術遺産へ認定したことを受け、2024年4月19日(金)に、認定証を受領しました。
認定証は、同学会より試作1号機を展示する当館のほかに、量産1号機を展示する一 般財団法人 科博廣澤航空博物館、当該機の型式証明を所有する三菱重工業株式会社に対し贈呈されました。
左) 一 般社団法人 日本航空宇宙学会 会長 森田泰弘様
中)公益財団法人航空科学博物館 理事長 椎名明彦
右) 同 常務理事 郡司文夫
当館は、1989年(平成元年)8月に、日本初の総合的な航空思想普及施設として開館し、YS 11型旅客機・試作1号機は、当館のシンボルとして、これまで数多くの来館者に親しまれてきました。本年は、開館35周年の節目に当たり、今回の栄誉を受け、当機の展示環境を更に充実させ、成田空港に隣接する教育施設として、当館の使命である、航空科学の振興と航空思想の普及、将来の航空人材の育成に、一層、力を入れて参ります。また、海外からのインバウンドを含めて、多様なお客様にとって価値のある場所、記憶に残るミュージアムとして、地域活力と共に、多くの方々に喜ばれる館運営を目指します。
YS 11試作1号機について
当館で展示しているYS 11試作1号機は、1962年8月30日に名古屋空港で初飛行に成功した実機であり、日本およびアメリカの型式証明を得るための飛行試験機として使用され、開発終了後はANAの整備士教育訓練機材として大阪国際空港で第2の人生を送っていました。
その後、YS 11開発の主導的人物であり、当館の初代理事長である木村秀政氏(日本大学名誉教授)が、当館の開館にあたって当機を迎え入れることとなります。当機は、1982年7月に大阪国際空港から新東京国際空港(現:成田国際空港)ヘラストフライトを行い、分解・輸送・組立などの作業を経て、1989年6月に当館に設置されました。
YS 11は当時の日本の航空技術を集結させた傑作機であり、航空史を語る上で非常に重要な機体です。当館で展示しているYS 11試作1号機からは、日本の航空技術の原点を垣間見ることができます。
一般社団法人 日本航空宇宙学会(会長:森田泰弘/宇宙航空研究開発機構所属)について
航空宇宙に関する研究の進歩普及を図リ、我が国における学術の発展に寄与することを目的として、1934年(昭和9年)に設立された団体です。会員数は4,000名以上で、航空宇宙に関する学理および応用の研究についての発表および連絡、知識の交換、情報の提供を行っています。
「航空宇宙技術遺産制度」について
日本航空宇宙学会が我が国の航空宇宙技術発展史を形づくる画期的な製品および技術を顕彰して後世まで伝え、今後の航空宇宙技術の発展に寄与することを目的として、我が国の航空宇宙技術発展史上の画期的な製品および技術に対して認定するものです。2023年4月には、『日本初の純国産ジェットエンジン「ネ-20」技術』、『「はやぶさ」による世界初の小惑星サンプルリターン技術』ほか4件が第一号の技術遺産として認定されています。
YS 11の認定理由について
YS 11は、戦後7年間の航空に関する活動禁止の後、日本で初めて設計、生産された与圧キャビンを持つ中型輸送機であると共に、型式証明を取得した国産旅客機です。
全180機が量産され、うち78機が輸出され外貨獲得にも貢献しました。
また当初の機体不備などが解消された後は、世界の最新鋭機と比較しても極めて高い運航率を誇る機体となり、国内旅客機としては2006年まで40年以上運航されました。
これらYS 11シリーズの開発経験や運用実績は、その後のXC1の開発などに活かされており、戦後の航空機産業の空白後にふたたび航空機設計の基礎技術を確立、蓄積したエポックメイキングな製品として航空宇宙技術遺産に相応しいというものです。
(引用元:一般社団法人 日本航空宇宙学会 ホームページより)